寄稿記事紹介(不正競争防止法について)

尼崎工業会さまの会報誌『AIAニュース』(AIAニュース No.201 令和7年3月24日発行)に掲載いただいている、弊所寄稿記事「知財の小噺」をご紹介いたします。
※本記事の内容は、2025年3月時点での最新情報です。
※記事のWEBでの紹介につきましては、事前に尼崎工業会さまに許可を得ております。

「知的財産権侵害だ!」と主張したら実は… 

知的財産権侵害とは、特許権・実用新案権・意匠権・商標権・著作権などの権利を侵害することです。
近年、インターネットショッピングサイトなどにおいては、自身の知的財産権を侵害する第三者を申告できる機能を設け、当事者同士で和解するまでは出品停止とするなどの対策が講じられています。

知的財産権侵害を申告したことによって、逆に訴えられた事例

X社(商標登録α)

AmazonⓇでY社が販売している商品に、自社(X社)の登録商標αが無断で使用されている!
これはきっと「偽造品」に違いない!Amazonにポチっと申告!

Y社(商標登録β)

Amazon®から商標権侵害の申告があったと連絡が届き、出品停止された。
販売商品に使用しているのは自社(Y社)の登録商標βだから、侵害なんてありえない。
X社に非侵害であると説明しても申告を取下げてもらえず、出品停止が解除されない…
X社の申告は「虚偽」だ!不正競争防止法違反で訴える!

裁判所の判断

  • 商標αと商標βは、見た目が一緒
  • 区分(指定商品)が異なるため、両商標とも登録されている(権利取得済み)
  • X社もY社も、自社の登録商標を各自使用しているだけ

⇒Y社は、X社の登録商標αを使用していない=非侵害

商標権侵害でないので、X社の申告は「虚偽」であり、不正競争防止法違反に該当する。

参考:平成30年(ワ)第22428号/不正競争行為差止等請求事件

知的財産権侵害でないのに「侵害である」ということも『虚偽の事実』に当たります。
 ※侵害か否かについては、裁判所の判断(自己、運営、専門家などの判断は×)
 ※損害賠償請求等される場合があります。

不正競争防止法 2条1項21号

競争関係にある他人の営業上の信用を害する『虚偽の事実』を告知し、又は流布すること

侵害申告・警告などを行う前に、専門家へ相談するのがオススメ

ちょっと待った!危ない場面

  • サイト内で侵害申告をしたい
  • 相手方へ警告書を送りたい
  • 鑑定書を書いてほしい
  • HPやSNSで侵害問題の件を掲載したい etc.…

いきなり強気にケンカをふっかけるのはNGです

侵害申告・警告などを行う前に、専門家へ相談することを強くオススメいたします。

今回の知財ワンポイント

第三者に対して「知的財産権侵害だ!」と主張する場合は慎重に。
もし非侵害である場合には、相手方から損害賠償等をされる場合があります。

※法改正などにより、記事の内容が現在の法律や知財を取り巻く状況とは異なる場合があります。