尼崎工業会さまの会報誌『AIAニュース』(AIAニュース No.202 令和7年5月26日発行)に掲載いただいている、弊所寄稿記事「知財の小噺」をご紹介いたします。
※本記事の内容は、2025年5月時点での最新情報です。
※記事のWEBでの紹介につきましては、事前に尼崎工業会さまに許可を得ております。
社員がした発明(職務発明)は、「会社のものではない」&「タダではない」
「社員が業務内で生み出した発明なのだから、会社のものだ」と思っていませんか?
実は、特許を受ける権利は原則として「発明者本人のもの」です。
社員が業務内でした発明(職務発明)であっても、会社に権利が自動的に帰属するわけではありません。
雇用契約や職務発明規定などで、あらかじめ「会社に帰属させる」旨を明記しておく必要があります。
職務発明規定 | 契約 | 特許を受ける権利 | 代償 |
社員が業務内でした発明の特許を受ける権利を会社に帰属させる旨の契約 | あり | 会社のもの | ”給与とは別に”相当の対価を支払う必要アリ! |
なし | 発明者(社員)のもの | なし |
退職した発明者のサインが必要な場合がある!
アメリカをはじめとする海外出願では、発明者による署名(Declaration等)が必要となる場合があります。
問題は「発明から出願までに時間が空く」こと。海外出願は発明から数年後になることが珍しくありません。
その間に、発明者が退職して連絡が取れなくなってしまうと、必要なサインがもらえず、出願や手続に支障をきたすことがあります。
対策
退職時に「協力義務」を明記した契約を交わす
退職後もサイン等に協力する義務を明記し、退職後の連絡先(私用メール・電話)も確認しておく。
退職時に「譲渡証(Assignment)」に署名してもらう
「世界各国での出願を含む」旨を含めておくことで、将来の海外出願にも対応可能。
「ヒトと情報は共に流れる」退職=情報の流出
退職や転職にともなって、技術情報やノウハウが社外に漏れるリスクも忘れてはいけません。
特に、明文化されていないノウハウや、将来出願予定のアイデアなどは、ヒトと共に流出しやすい情報です。
対策
退職後の「情報保持義務、業務外利用の禁止、競業避止」などを明記した契約を交わしておく
普段から秘密情報の取り扱いを意識してもらうことが重要!!
契約の取り交わしや改定をしやすいタイミング
- 入社時
- 年度変わり・・・規程の更新
- 昇進・異動時・・・業務範囲の変化
- 退職時・・・契約内容の再確認
なんとなくでやり過ごしてきたのなら、今すぐ契約の見直しや必要に応じて改定をおすすめいたします。
知財ワンポイント
職務発明契約&秘密保持契約は、揉める前に見直しを!
昇進時や異動時の契約の取り交わし・改定は、受ける側の気持ち的にも受け入れやすく特に有効です。
※法改正などにより、記事の内容が現在の法律や知財を取り巻く状況とは異なる場合があります。
いしい特許事務所では、上記に限らず、各種契約に関するご相談も随時承っております。