寄稿記事紹介(立体商標とは)

尼崎工業会さまの会報誌『AIAニュース』(AIAニュース No.204 令和7年9月19日発行)に掲載いただいている、弊所寄稿記事「知財の小噺」をご紹介いたします。
※本記事の内容は、2025年8月時点での最新情報です。
※記事のWEBでの紹介につきましては、事前に尼崎工業会さまに許可を得ております。

立体商標とは、ロゴがなくても伝わるブランド力

商標の登録対象は、ロゴやブランド名に限りません。
商品や容器の立体形状でも、長年の使用によって識別力(誰の商品・サービスかを識別できる力)が獲得されれば、立体商標として登録することができます。
※ただし、機能上不可欠な形や、ありふれた形は原則として登録できません。

ポッキーの『形』が商標登録!

半世紀以上にわたり親しまれている江崎グリコの「ポッキー」(チョコレートをまとった細長い棒状のお菓子)の形状そのものが「立体商標」として登録されました。食品自体の形状が立体商標として認められるのは、極めて珍しい事例です。

立体商標の登録例
明治 サイコロキャラメル登録第6359276号神戸風月堂 ゴーフル登録第4175405号
森永 ラムネ登録第6378638号六甲バター QBBベビーチーズ登録第5114557号
明治 たけのこの里登録第6419263号名古屋 ぴよりん(スイーツ)登録第5663067号
明治 きのこの山登録第6031305号ロータス ビスケット登録第6628279号
居酒屋 新時代 鶏皮串登録第6613064号千疋屋 マスクメロン 登録第6033061号
※最近では、ロッテのパイの実(お菓子自体の形状)が出願され、現在審査中です(商願2025-79660号)

『ポッキー』が立体商標登録(登録第6951539号)されたポイント

  1. 長期の販売実績と多面的な露出
    • 発売から続く豊富な販売実績と、店頭・広告・メディア露出の積み上げにより、多くの人々が、お菓子の形状だけで江崎グリコの商品「ポッキー」を連想できるレベルに達しました。
  2. 同じ形状を一貫して使用
    • 「細長いスティック+持ち手のみ無コーティング」というポッキーの特徴的なシルエットをぶれることなく継続して使用し、ロゴやネーミングに頼らず「お菓子の形状そのもの」をブランドの顔として定着させました。
  3. 市場での高い認知
    • お菓子自体の形状だけで商品を特定できるほどの認知が市場で形成され、販売・広告資料や調査結果といった客観的データによっても裏付けられました。

事前の商標調査&市場調査が必須!

永く愛されるブランド作りには、事前の市場調査と商標調査が欠かせません!
類似するブランド名やロゴがないか、今後使用していく中で識別力を十分に獲得していけるか、をブランド名やロゴを確定する前に確認することをオススメします。
調査をせずに進めた場合、商標登録が認められなかったり、他の商標権者から侵害だとして訴えられるリスクがあります。

商標の強み

特許や意匠権と異なり、商標権は更新し続けることで半永久的に権利を有することができる!
ブランドの「顔」を長く守り続けられるのが商標の最大の強みです。

知財ワンポイント

他と明確に区別できる=識別力のあるブランドづくりが重要

新規ブランド立ち上げの際は、確定前に必ず確認を!